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マンガ学 / スコット・マクラウド

 

【1章 〜まず定義から始めよう〜】

 映像が時間的であることに対して、マンガは空間的である。

 

【2章 〜マンガの記号論〜】

 抽象度が上がるにつれて(デフォルメ)記号への能動性を要する(仮面効果)。

 抽象化には2つの方向があって、それは言語(意味性)と絵画的平面図形(抽象性)である。

 

【3章 〜コマの隙間に何がある〜】

 2コマの間(間白)を自然/人為的に能力を《補完》という。それは読者の共犯によって成り立つ。

補完技術の6分類

・1 瞬間→瞬間  ほとんど補完を必要としない 

・2 動作→動作  映画でいう1ショット

・3 主体→主体  映画でいう1シーンでのカット割り。補完を必要とする。

・4 場面→場面  時間や空間を飛び越える。より深い補完が必要。

・5 局面→局面  同じ場所や問題、ムードの様々な局面を多視点で描く。

・6 関連なし 

西欧の一般的なマンガでは2、3、4で作られている。(2が6割以上を占める)

日本のマンガでは(例は手塚)2が減り、1、5の場面が一定数つかわれている。

これには東洋的な《間》が関係している。

 

【4章 〜時間と空間の認知科学〜】

コマの大きさや形、言葉の量や種類(セリフ、ナレーションなど)、動線によって読者の心の中に生まれる時間。

 

【5章 〜描線の生態観察〜】

描線のタッチによる心理的な効果。

 

【6章 〜見せて、おはなし〜】

絵と言葉で物語る際の、2つのバランス、種類、関連性。

 

【7章 〜6つのステップ〜】

・1 発想と動機

・2 表現形式   漫画

・3 文法

・4 構成

・5 技術 

・6 外観     

 

【8章 〜漫画の色彩学〜】

【9章 〜結論!マンガとは何か?〜】

闘争領域の拡大 ミシェル・ウエルベック 訳/中村佳子

フランス人作家ミシェル・ウエルベックの94年に発表された処女小説。

とくに筋というものはなく、3章仕立てで細かく節に分かれている。それなりの収入はあるが友人も恋人もいない会社勤めのプログラマーである僕が観察者として、周囲の人物や現代社会、そしてそれを象徴する物事に思いを巡らしながら小説は進んでいく。

仕事以外の時間に動物小説を書いたりはしているものの、充実した生活には遠く、僕の憂鬱は次第に強くなり精神病院に入院することとなる。ラストに退院した僕が一人広大な自然の中でカタルシスを得るところは、ほかのウエルベック作品にも見られる傾向である。

タイトルの闘争領域は、従っていれば事なきを得るルールの外側の領域ことで、資本主義が進むことでそれが拡大し、資本や恋愛の格差は広がっている。作者によれば、自身の作品は「解明の試み」であるようだ。

 

「僕の話は、緻密な心理描写で読者を魅了するという類のものではない。(中略)僕の狙いは、より哲学的なところにある。その狙いを達成するためには、逆に無駄をそぎ落とさなくてはならない。(中略)目下、世界が画一に向かっている。通信手段が進化している。住居の中が新しい設備で豊かになっている。徐々に、人間関係がかなわぬものになっている。そのせいで人生を構成する瑣末な出来事がますます減少している。そして少しずつ、死が紛れもないその顔を現わしつつある。第三・千年紀は幸先がいい。」

 

 

井戸の茶碗

 

栗原東随舎『思い出草子』に収録の人情話。井戸茶碗は高麗茶碗の一種。

 

登場人物

 清兵衛   ー 屑屋

 千代田卜斎 ー 裏長屋に住む浪人

 高木佐太夫 ー 細川家の家来

 

あらすじ

200文で仏像を買って欲しいと卜斎に頼まれた清兵衛は、目利きが効かないからと1度は断るものの、情に絆され条件付きで買うことになる。その条件とは、他で200文以上の値で売れればその利益を折半しようというものだった。

清兵衛が仏像を籠に入れて流し歩いていると、白金の細川家の窓下を通ったところで高木佐太夫に声をかけられる。仏像を見た佐太夫はこれを気に入り300文で買う。

佐太夫が仏像を磨くと台座の下の紙が破れ、中から50両の小判が出てくる。小判を買ったつもりはないと、50両を仏像の持ち主に返すよう清兵衛に命ずる。しかし、卜斎もいったん手放したものから出た50両は受け取れないと断る。

困った清兵衛は家主に相談する。家主は、卜斎と佐太夫に20両、清兵衛に10両で手を打ってみてはどうかと案を出す。これに佐太夫は納得したものの、卜斎は不服な様子であったが、いらない茶碗と交換ということでなんとか20両を受けとる。

これが美談として話題になり、佐太夫は細川の殿様に茶碗を見せることになる。すると、これは井戸の茶碗という名品であることが判明し、殿様が300両で買いあげる。

佐太夫は先例にならい、卜斎のところへ半分の150両を清兵衛に持って行かせる。卜斎は150両を受け取るわけにはいかないと断るが、佐太夫が娘を嫁にめとって下さるならば、と清兵衛に伝える。話を聞いた佐太夫は嫁にもらうことに決める。清兵衛が、今は身なりが悪いが磨けば美人になりますよと言うと、また小判が出るといけないからと断る。

青い花 / 吉行淳之介  (1959) 

 

 麻田は家に篭って小説を書いている。麻田が半年ぶりに外出した日の夜に、彼の妻は大量の睡眠薬を飲む。彼は医者を呼ばずに対処して、なんとか妻を寝かしつける。次の日の夕方になっても、もがき苦しむ妻を残して、彼は汽車にのって街を離れる。

 翌日、麻田は少年時代に夏休みを過ごした高原に登る。そこで思い出の少女に再会する。女は15年前に自殺騒動をおこした。その原因となった男と、今は一緒に暮らしていた。彼は旦那の勧めで家に泊めてもらうことになるが、夫婦が寝付いたあと、巨大な男が出現する、という幻覚に襲われる。気がついてみると、外は明るく、山の麓にある旅館の布団の中にいた。

 彼が帰宅すると妻の軀は消えていた。密閉された家でじっと3日間を過ごしたあと、庭に出てみると、堅く踏みかためられた土から茎を伸ばし、その突端に1輪の水色の大きな花が咲いていた。

 

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ある訪問

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女はうとうとしている。傍らに立派な豹がいる、軽くひと跳ね、ベットに飛びのり彼女の匂いをかいだ。それからしばらくして、、月の光に照らし出されていたのは、深く眠っているように見える豹だった。彼は魅力的だ。匂いも模様も。

猛暑であったから彼女は窓を開けていた。だから豹が入ってこれたのだ。そんな家に豹は、昼間はほとんどいなかったけれど(自分の餌を採りに行っているのだろう)たいてい戻ってきては、彼女のそばで寝そべったり、仕事を眺めたりした。

ところが、何の前触れもなしに、彼は突然出て行ってしまった。彼女の生活は仕事と、取るに足らぬ平凡な出来事の連続という以前の決まりきったリズムに戻りました

 

 

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 人類滅亡後のはるか未来。もういない主人の命令に従って、住みよい地球を維持するロボット達。なかでも北半球のリーダーを任されているフロストは変わり者で、趣味として人間に興味を抱いていた。そんな彼は、人類が残した<人間の図書館>と出会ったことで、趣味にますますのめり込み、人間性を手に入れようとする。

 

「音です。匂いです。それに計量不能のもの……混乱したデータ……不正確な知覚……それに……」

 

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幽霊

 

北杜夫の処女長篇。27〜28年にかけ「文芸首都」に分載、昭和29年に自費出版された。

 

 第1章

 少年のぼくは、母の部屋が好きだった。部屋には、日本間には似つかない彫刻をほどこした木縁の大きな鏡があった。母は鏡の機嫌をとるかのように入念に部屋のなかを洋風にしつらえた。                                

 ぼくは、ある種の形に興味をもっている。よく絨毯のうえにかがみこんで、そこに白く染めぬいてある模様に、枝葉や人を見た。そのことを母に伝えると、これは鳥でしょう、という。そう言われてみると、たしかに鳥に見えてくるので、ぼくには母が魔法を使ったとしか考えられなかった。

 唾に似た白い泡から出てきた黒と赤の縞のある虫/女郎蜘蛛の伝説/赤蜻蛉/褪紅色の翅

 また父の部屋も好きだった。学者の父は部屋中を本だらけにして、まるで本の方が主人のようみえた。そんな父は若くして辺鄙な街で、狭心症で死んでしまう。

 父が死んでから、母も不在の日がつづいた。そして、ある日を境にもう2度と帰ってくることはなかった。