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たんぽぽ殺し

 

 黒づくめの男ミヒャエル・フィッシャーはお尻を右に左に揺らしながら、フィヒテン通りを歩いていた。いち、にい、さんと歩を数えながら。右手に持った細い散歩用の杖は道端の草花のうえで揺れて弾み、花を愛でた。

 太った紳士が呑気に道を歩んでいると、杖がわずかな雑草に引っかかった。ぐいっと引っ張ってみたが失敗した。なんとか二回目で両手を使い引き離すことに成功した彼は、一瞬、我を忘れてその場に立ち尽くす。そして奇妙なかたちの花を凝視したかとおもうと、それをめがけておおきく杖を振りおろした。路上には茎や葉が飛び散り、紳士はふたたび歩きはじめた。

       

        しばらく歩くと先ほどのことがありありと蘇る。

   

            この花が私を誘ったんじゃないか

                 杖がうなる

               ばきっと、首がとぶ

 

 

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