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闘争領域の拡大 ミシェル・ウエルベック 訳/中村佳子

フランス人作家ミシェル・ウエルベックの94年に発表された処女小説。

とくに筋というものはなく、3章仕立てで細かく節に分かれている。それなりの収入はあるが友人も恋人もいない会社勤めのプログラマーである僕が観察者として、周囲の人物や現代社会、そしてそれを象徴する物事に思いを巡らしながら小説は進んでいく。

仕事以外の時間に動物小説を書いたりはしているものの、充実した生活には遠く、僕の憂鬱は次第に強くなり精神病院に入院することとなる。ラストに退院した僕が一人広大な自然の中でカタルシスを得るところは、ほかのウエルベック作品にも見られる傾向である。

タイトルの闘争領域は、従っていれば事なきを得るルールの外側の領域ことで、資本主義が進むことでそれが拡大し、資本や恋愛の格差は広がっている。作者によれば、自身の作品は「解明の試み」であるようだ。

 

「僕の話は、緻密な心理描写で読者を魅了するという類のものではない。(中略)僕の狙いは、より哲学的なところにある。その狙いを達成するためには、逆に無駄をそぎ落とさなくてはならない。(中略)目下、世界が画一に向かっている。通信手段が進化している。住居の中が新しい設備で豊かになっている。徐々に、人間関係がかなわぬものになっている。そのせいで人生を構成する瑣末な出来事がますます減少している。そして少しずつ、死が紛れもないその顔を現わしつつある。第三・千年紀は幸先がいい。」